高速道路における速度差




速度差の認識と予知(後編)

  4輪の免許証を取得する以前から自動2輪に乗っていたので、普通に考えれば高速道路走行マナーの基本くらい知っているはずなのですが、17〜18歳の頃にはガソリン代を捻出するだけでも大変でしたから、高速道路の通行料金を払うことなど考えられなかったのです。確かな記憶はありませんが、軽自動車で横転した日までの高速道路走行体験(日常的渋滞で追い越し車線マナーに対する、ドライバーの認識が薄い首都高速道路と京葉道路を除いて)は自動2輪を含めても数えるほどしかなかったと思います。今ならば教習所に高速道路教習がありますが、私の頃にはありませんでしたから、免許証を取得したのちに初めて高速道路ドライブにチャレンジするのが普通でした。そこで遭遇した東名自動車道での走行体験が前回お話したもの。制限速度が80km/hなのだから「走行車線でも追い越し車線でも80km/hで走って何が悪い」と当たり前に思っていた私は、僅かな体験ながら、交通のスムーズな流れに乗ることで快適なドライブが出来るということを知りました。ところが、その時点では走行車線から追い越し車線へのレーンチェンジの際に、事前に加速するという認識がありません。それまでの体験範囲では、私の軽自動車を追い越して行く大型トラックと同じように充分な車間距離を保持しているクルマを待って、追い越し車線に移れば構わないというレベルの認識です。
  360ccの軽自動車に3名乗車では、大型トラックと変わらない加速力だったのですが、追い越し車線にレーンチェンジしたのちには必死でフル加速しました。その時わたしの後方に迫ってきたのは、2代目シルビア(当時はソロバン玉といわれていた個性的なスタイルのシルビアで、現行型S15シルビアとは比較対象にもならない走行性能のクルマでしたが、360cc軽自動車よりは遥かに優れた性能を備えていました)。必死に加速しているはずのマイスバルですが80km/hから100km/hオーバーまで加速するには、かなりの時間を要しました。120km/hくらいで走ってきたシルビアは瞬く間にマイスバルの背後を脅かします。ようやくマイスバルの最高速度である115km/hに達しましたが、120km/hアベレージのシルビアにとっては邪魔な存在でしかありません。ところが当時の私の運転経験では「制限速度を35km/hもオーバーして走っているのだから、充分に交通の流れをリードしている」という認識しかありません。もちろん交通法規から考えれば立派な違反行為ですし、当時なら赤キップのスピード違反ですから私の認識は間違っています。軽自動車の制限速度で交通の流れをリードする事はもちろん、制限速度を35km/hオーバーしていることを正当化できる筈ありません。



事故に遭いたくなければ違反しなさい!?

  さて大切なのはこれからです。『事故に巻き込まれるのがイヤであれば速度違反をしなさい』という話ですから、教習所でも、安全運転学校でも絶対に口にすることはできません。私自身も安全運転教室の講師を引き受けることがありますから、言ってはならない立場ですけど日常的に言っています。考えられる反論例をあげてみましょう。
「速度違反するくらいならば、追い付いた大型トレーラーの後ろについて70km/hで走り続ければいい」「追い越し車線が空くのを気長に待てば制限速度の範囲で追い越すことができる」などですね。どちらも正しいと思います。ただし、私が皆さんに伝えようとしている『交通事故は避けて通れる』では正しくありません。その理由はたくさんありますが、今の段階では3つの例をあげます。
○大型トレーラーは重量物を積んでいるので、万一積み荷が落下すれば怪我するのは後続車両である
○後続車両が居眠り運転していたり、ブレーキ故障して追突してくる事態を考えれば、前方の車両は小さい方がよい
○大型トラックの後方では前方視界を塞がれるため、事前に交通状況を察知できず、大型トラックのドライバーが状況判断を過った場合に巻き込まれるのは後続車両である

 このような理由により、私は速度違反をしてでも前を走る大型トレーラーを追い越し、さらに走行車線に戻る際にトラックの前には入らないことを推奨します。乗用車に追突されたなら大事に至らなくとも、積み荷のあるトラックに追突されたら死亡事故に巻き込まれる可能性があるからですね。トラックドライバーを非難しているようで心苦しいですが、全て現実のことですし、トラックのドライバーは社会一般ではプロドライバーですが、実際にプロドライバーとして生計を立てている私に言わせれば、本当にプロと言えるのは僅かなのが現実です。
  ところで私の事故の話はどうなってしまったのでしょう? 相手はトラックではなくシルビアだった筈です。大丈夫です。忘れていません。次回は必ず真相を明らかにします。




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