交通法規は決して万能ではない




出会う相手は信用できない?
 
 
『事例10)見通しのきかない道幅の狭いカーブで、キープレフトが出来ないのに減速しない奴』についてです。様々な事例についてはこちらを確認してください。10の事例の研究も最終回ですから、改めて読んでいただいた方がいいでしょう。「面倒と思う油断が事故の元」ですよ。この連載をはじめて読まれる方は全編INDEXにどうぞ。
 えっ、前回の解答ですか? それは日本ではクルマは左側通行だからですよ。一方通行でない道路を横断する際に、最初に接触する可能性のあるのは右方向から走ってくるクルマですから。
 さて、お題目の『見通しのきかない道幅の狭いカーブで、キープレフトが出来ないのに減速しない奴』を正確かつ詳しく言い換えましょう。「見通しのきかない道路では対向車が来る可能性があるから、すれ違いに充分な道幅がないのなら事前に減速をして急停車出来るように準備しておくか、どうしても速度を落としたくないのなら常に対向車とすれ違う事を意識して完璧なキープレフトをする」という事。これで終了。味気ないですか? では10個の事例シリーズ最終回ですから、特別サービスしましょう。
 事故を回避する事の基本は、常にこの先に起こりうる危険を意識しながら運転し、いざ危険に遭遇してしまった場合の接触回避方法を準備しておく事です。それでもダメなら、ドライビングテクニックを磨いたり、より高性能なクルマに乗り換えるしか手段はありません。制限速度範囲内で走り、完璧なキープレフトを行なっているにもかかわらず、狭い道路のド真ん中を制限速度オーバーで走って来る対向車に出会ってしまったらどうしましょう?


1)腕前が頼り
 衝突の衝撃を最低にし、示談を優位にするために瞬時に停車する運転能力と反射神経を身につけましょう

2)クルマが頼り
 ブレーキ制動力があり、優秀なABSが装着され、頑丈か衝撃吸収力に優れたクルマを手に入れましょう

 それでは、同じような事例を交差点に例えて解説しましょう。

 それと前回好評だった写真を「もっとアップで」というリクエストにお応えしておきました。
友人のクルマAが最徐行で交差点に進入した瞬間にクルマBが出合い頭で衝突
状況1)止まれ標識があったため、Aは一時停止してから最徐行で交差点に進入した
状況2)カーブミラーが曲がっていたため、止まれ標識の停止位置ではAからBは確認できなかった
状況3)この交差点は住宅地の塀に囲まれており、AとBのどちらからも直接目視では全く見通しがきかない
状況4)道幅はBよりもAの方が広かったが、交通法規通り忠実にA側は慎重な再徐行で交差点に進入した
状況5)地元店主であるBは周辺地域を熟知するが、止まれ標識がない交差点なので事前に減速しなかった
状況6)Aはボンネットのある乗用車だったため、Bと衝突する瞬間までBを確認することができなかった
状況7)Bは一方通行路を約30km/hで走ってきたが、Aが見えた瞬間ブレーキを踏んでも間に合わなかった
状況8)Bの走ってきた道路は制限速度30km/hであり、交差点手前に特別な道路標識はなかった

これは実際に私の友人がAを運転しており、私の実家近くで起こった事故です。保険会社の判定ではAの過失80%、Bの過失20%となったため、当時保険代理店を営んでいた私がB側保険会社のアジャスターに交渉し、結果的にAが60%、Bが40%で示談成立しました。その際の論理に基づき、この事故を未然に防ぐ方法を分析してみました。
 
Aがこの事故を事前に避ける対策
1)最徐行の際に再度一時停止し、Bに対し自車の交差点進入を知らせる
2)対向車がいなかったので、左からAが来る事を予測して進行方向右寄りから交差点に進入する
 
Bがこの事故を事前に避ける対策
1)見通しのきかない交差点における注意義務を怠ることなく徐行、または一時停止する
2)住宅地なので万一の歩行者の飛び出しを想定し、制限速度にかかわらず即時停車可能な速度をキープ
3)狭い住宅密集道路では、常に急ブレーキに対応できるように心と体(右足)を準備をしておく
4)日頃からサ−キットやクローズドコースで急制動の訓練をしておく
5)普段からブレーキ制動能力の高いクルマに乗るように心がける。

 まあ、Bの4と5については1と2と3が完璧ならば付録のようなものですが、この事故については過失の小さいBの方が事故を防ぐための手立てが多いですね。皆さんが日頃運転している状況を考えると、Aの運転には同情できる点があるでしょう。一方Bについては「止まれ標識がなければ止まらないのは当たり前」「制限速度内で走れば違反ではない」という、交通法規の基本には従いつつも現実的な道路状況に沿った運転でない点で、やや反感を感じるハズ? ただし、交差点では止まれの標識のない側優先、または標識がなくとも左方優先の基本があるため、黙っているとAの過失割合は80%になってしまうのです。現実にはB車のようなドライバーは非常に多いのではないでしょうか? ここまで例にあげた10個の例に共通しているのは、事例7を除けば「法律守れば文句あるか!」というワガママかつ身勝手な論理に基づく事に根ざしている気がします。もし、今回の事故でBがオートバイであったら死亡事故になっていた可能性もあったのです。現実に今回紹介した事故現場近くの同様の交差点では、同じ状況で接触事故を起こした自転車の子供が即死している・・・


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