2001年3月8日施行
第18条
壊さないドライバーを目指すべし
98年 車楽人ドラテクスクール in MSSPサーキット
[電光石火と遅咲きの桜]
「ドライビング」のセンスに個人差があること、「ドライビング」テクニックに細かなチェックポイントがあることは17条に書いたとおり。問題なのは、電光石火と遅咲きの桜。「ドライビング」を趣味として気軽に長く楽しむのなら、どれほど遅咲きでも構わないと思う。それでも、プロ志向を持っている方の場合には「趣味で長く続ける事か、一気に時間とお金を投下して勝負に出るか」の選択枝に悩む事もあるだろう。筆者に相談のある場合はやはり後者の方が多い。そこでいかなるアドバイスをするかを少し紹介しておこう。
幼少のころからレーシングカートなどに慣れ親しんできた数少ないドライバーであれば、常にステップアップという言葉に直面しているはずだから、いかなるレースに参戦した場合でも結果を求められ、それが良きプレッシャーとなることもあるだろう。そんな極まれな方を除けば、プロ志向を持って「ドライビング」の道に入ることはお勧めできない。それは、常に最短距離で結果を残すことを考えるあまりに専門バカになってしまう可能性があるから。ラップタイムばかりが先行し、スピードにはめっぽう強いが、基本的なドライビングテクニックやメカニカルな知識が欠如するドライバーになってしまうかもしれない。もちろん速いラップタイムを出せるようになれば自然と基本が身に付いてくるものだが、サーキット業界の場合にはドライバーの基本が欠如しながらも、速いタイムで走れてしまう事もある。こういったタイプのドライバーの多くは、「勝つかクラッシュするか」とか、「一発では速いのだが、安定性がない」という評価を受けかねない。具体的には「クルマに自分を合わせることができない」「セッティング能力がない」「レースに参戦するとリタイヤが多い」といった結果に結び付くこともあり得る。電光石火を狙うなら地道な努力を積み上げてから晴れ舞台に立つこと。そうでないなら、遅咲きの桜で充分だと思う。峠やハイウェイ等のワインディングロードでも、サーキット走行会でも自分の好きなライフスタイルで「ドライビング」を楽しめばいいのだが、クルマを壊して欲しくない。壊さないで長く走り続ければ、「ドライビング」を楽しみながら遅咲きの桜となる日がやって来るかもしれない。ぜひクルマを壊さない方法を考えてもらいたい。速く走る「ドライビング」テクニックは壊さないテクニックと抱き合わせであるべきだ。アドバイスの結論は、「クルマを大切にし、ラップタイムばかりを追求するドライバーにはならないこと」である。