2001年6月6日施行

第26条

パニック時の対処法はあわてない操作


ドリフトコントロールはタイヤの縦横グリップをバランスさせるテクニック

 ではさっそく前回の模範解答から。アクセル開度一定のまま、ステアリングを切り込んでいってもクルマが曲がっていかない状況であれば、A地点からゆっくりアクセルを戻してゆき徐々に減速させつつ、緩やかなタックインを利用してクルマを曲げてゆく。またタイヤの残り溝が豊富であれば、B地点でフルブレーキング(瞬間的判断によるフルブレーキならば空走距離は短くなるから)することで道路上で止まれる可能性(B地点で接線を引いてみればわかるよね)もあるが、残り溝の少ないタイヤでほとんどグリップが期待できなければタイヤを転がしながら止めるしかない。ステアリングにタイヤグリップを感じることがなくなり心細いが、緩やかなアクセルオフと同時に小さくステアリングを切り込む動作を繰り返しながら徐々に減速を続けることだ。ただ実際にパニック状態に遭遇した場合にマニュアル通りに操作することは難しいから、最も現実的対処法はアクセル操作、ブレーキ操作を意識的に緩やかにすることだけは忘れない事だろう。
 タイヤには縦方向のグリップ力(クルマを進ませたり止まらせたりするグリップ力)と横方向のグリップ力(コーナリング中にアウト側にクルマが飛び出さないよう踏ん張るグリップ力)があり、理想のコーナリングは縦横グリップのベストバランスにある。タイヤの総合グリップ力を100だとすれば、縦グリップ+横グリップ=100であり、ドライバーがアクセルによって縦グリップを増減させることにより、横グリップも自動的に増減する。つまりタイヤの性能を有効に引き出すのはドライバーの仕事なんだな。タイヤのグリップ力が優れているほど、低い速度域でのアクセルオンオフによるタイヤグリップの縦横増減幅は減り、ドライバーがハンドルをきれば勝手にクルマは曲がってゆく。それともうひとつタイヤグリップの概念。ここで説明したタイヤグリップの100には「大きい100」と「小さい100」がある。「大きい100」とは、タイヤのグリップ性能が優れている(タイヤの幅がある、タイヤがハイグリップを発揮できる材質で作られている、タイヤ外径が大きくタイヤ接地面が増えるなど)、路面のグリップ状態が良好だということ。つまり冒頭のようなパニック状態は「小さい100」。このように100が大きいほどドライバーは苦労なくコーナリングしたり、ブレーキングしたり出来るのである。ただし苦労ないという事は、ドライバーの能力を超えたスピード領域に無意識のうちに到達してしまう事も意味するのだ。

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