2001年6月29日施行
第28条
サーキットラップタイムの実態
本質を知るためには、いい素材が必要。ドライバーには、本質を知るための能力が求められることを忘れてはいけない。
ドラテク皆伝をを読む方は、少なからずドライバーのテクニックにこだわりのある方、運転が上手になりたい方だと思うので本当のことを書いてしまう。 特に速く走ることに限定すれば、速く走るための3大要素というのがある。クルマ・ドライバー・コンディション(路面)の3つ。クルマはエンジンパワー・タイヤ・車重・サスペンション・空力性能のトータルバランス、ドライバーはテクニックと経験と体調、コンディションは気候とその日の環境(オイルが出ているとか路面が改修されたとか)のこと。サーキットラップタイムの場合は、すべてこの3大要素の結果なので、極端なことを言えば、ドライバーのレベルが低くても他の2つの要素でカバーされてしまうことが多々ある。つまりラップタイムというのは、そのままドライバーの評価ではない事を知っておこう。3分の1程度だと思っていた方がよい。速いラップタイムの経験は、ドライバーにとって、スピードに適応できる目を養うことには役にたつのだが、それはドライバーの経験の蓄積であって、直接的に速さの指標にはならないのである。当たり前のことだが、500馬力・1000kg・スリックタイヤのクルマで、200馬力・900kg・Sタイヤのクルマに勝つためには標準的サーキットドライバーで大丈夫なのである。逆になれば想像を絶するほどハイレベルなプロドライバーを必要とするが、それでも勝てる保証はない。危険が伴わなければ、また経済的にゆとりがあるのなら標準的ドライバーには痛快なのだが、現状では痛快とは言えなくなりつつある。 「ドライビング」を本格的に知ることは、ドライバーがタイヤグリップを軸に物理的にクルマを理解できることだ。理論的に説明できる必要はないが、本能でわかるにはかなりの経験と天分が必要となる。そういう意味でドラテク皆伝は「ドライビング」の教科書または虎の巻と思っていただけばよい。日本全国のサーキットにおけるラップタイムランキングを数年間作成し、サーキットスポーツを提唱し続けてきた筆者が次の段階を考えるのは、ドライバーのレベルを明確にする新しい「速さの基準」である。「ドライビング」をゴルフ練習場、サーキットドライブをカントリークラブでのプレーにしなければ、モータースポーツはスポーツとして社会的認知されないと考えるからだ。ただし公道でゴルフボールをフルスイングで飛ばす人が常識ではいないように、公道でフルパワーで飛ばすことには、一考を要するということを充分に理解して欲しい。誰もいない山奥でゴルフのフルスイングをしても死ぬことはないが、クルマの場合は死んでしまうこともあるのだから。 |