2002年2月5日施行
第36条
コーナリングとクルマを止める方法の考察その1
ブレーキングしながらステアリング操作する事は基本的スポーツコーナリングテクニック
第35条までは精神論が先行した感のあったコーナリングの話だが、第36条からは「クルマを止める方法」を交えて具体的ドラテクの事を書いておこう。クルマを止める方法としてまっ先に頭に浮かぶのはブレーキングだろう。ブレーキペダルを踏み込めばクルマは止まるものと思い込んでいる方は少なからずいるが、ドラテクの話となればそれでは駄目。ブレーキングしても路面が滑り易かったら簡単に止まれないし、コーナリング中にはブレーキングだけでは止まれない事もある。サーキットを走り込んでいるレベルのドライバー諸氏にはナナメ読みしていただく内容から始めよう。 コーナリングを単純に分けると3パターンあって、1)ブレーキングが必要なコーナリング、2)ステアリングを切り込むだけのコーナリング、3)アクセルオンオフの操作を伴うコーナリングだ。 1)ブレ−キングが必要なコーナリング 最も一般的なコーナリング操作で、コーナー手前でブレーキングによって減速してからコーナーに進入する事。通常のドライビングではステアリングを切り込む以前にブレーキ操作を終えるが、スポーツドライビングではステアリング操作と連動しながらブレーキングする事が必要になる。 2)ステアリングを切り込むだけのコーナリング 簡単そうなコーナリングだが、スピード領域が上がるに伴い、コーナー半径が小さくなるに伴い、道幅(コース幅)が狭くなるに伴いテクニックと経験が必要になってゆく。例えばアクセル全開のまま曲がるコーナーでもライン取り、ステアリングを切り込むタイミング戻すタイミングはドライバー次第となる。 3)アクセルオンオフの操作を伴うコーナリング 最難関がこれ。ブレーキングを伴う方が高度に思いがちだが、それは低速コーナーだけの話。中速(目安として80km/hを越える速度)コーナー以上でアクセル全開のまま曲がれないコーナーを想定しての事だが、ブレーキングをコーナリングのキッカケに出来ず、恐怖心の克服を最も必要とする。そして実際にコーナーリング動作に入ってからの微妙なアクセルコントロールこそドラテクの真骨頂とも言えるのだ。 さて上記1)〜3)を理解出来ている方は、これで第36条は終了。ハッキリと理解できない方には続きがある。2)と3)はスポーツドライビングに求められる特殊なドラテクだからすぐには必要ではない。ところが1)については、クルマを運転するからには絶対に身につける必要がある。言わずもがな、クルマを止める事と密接にかかわるから。通常のドライビングではコーナリング中にブレーキングするというのはパニック時以外にない。では危険回避にはクルマを止める事が最良の手段だろうか? 2台のクルマがすれ違うだけでギリギリの道幅のブラインドコーナーで突如対向車と行き当たってしまった場合を思い浮かべよう。すぐに止まれる徐行中であれば、衝突の危険回避は相手次第で道路最左端で緊急停止する。しかし30km/h以上の速度が出ていて即時停止できない状況なら判断は別れる。衝突の衝撃を最小にするようにフルブレーキングするか、ステアリング操作が可能なブレーキングで対向車回避を試みるかだ。アンチロックブレーキが一般化した理由は、こうした事態を想定してステアリング操作と強いブレーキングを同時に行なってもクルマが向きを変える事を可能にするため。されどアンチロックブレーキも万能ではない。ブレーキペダルは必ずしも思いきり踏むだけのものではないからだ。弱めのブレーキングではアンチロックは作動せずステア操作にクルマは敏感にレスポンスするが、アンチロックブレーキが作動するブレーキ踏力となるパニック時にはクルマのレスポンス低下は免れない。その差によって接触を回避出来るか否かが別れる状況はいつでも起こる。こういったパニック時の判断力と正確なブレーキ&ステアリング操作の能力はスポーツドライビングに応用され、また逆に日常のドライビングにフィードバックされているのである。 |