2002年2月1日施行
第35条
コーナリングすることを考え直せ
ステアリングが直進状態のままクルマが回頭してゆくコーナリング姿勢をゼロカウンターという
昨年秋以来になってしまったが、第34条で書いた事を覚えているだろうか? 改めて読んでもらったとして、最も思い出して欲しいのは「ビギナーにハイグリップタイヤはオススメできない。・・・・」から最後まで。サーキットにおける速さの3大要素は「クルマ」「ドライバー」「コンディション」だ。もちろんタイヤ性能は「クルマ」に含まれる。まっ先にタイヤを挙げる理由は既に書いているから詳しくは省略するが、要するにエンジンやサスペンションの性能を上げていってもタイヤグリップが足りなければ速さを決める要素に「ドライバー」が占める割合が大きくなるからだ。速さの要素にドライバーの占める割合が高ければ、クラッシュのリスクは小さくなる。言い換えればクルマのコーナリング性能を落とす事でドライバーの仕事量が増えるという事。ここで改めて考えてみよう。サーキット走行において、またストリートのワインディングロードでもドライバーがクルマをコントロールしている喜びを最も感じるのはコーナリングだろう。最高速やゼロヨンバトラーでも「コーナリングが嫌い」という方は少ない。スポーツドライビングに限ったことではなく普通のドライブにおいても、クルマを自らがコントロールしている事をいちばん感じるのは「カーブを曲がっている時」「ステアリング操作をしている時」というドライバーが多い。 これだけコーナリングの価値観がハッキリしているのに、サーキットを走るドライバーの多くがコーナリングよりもラップタイムに比重を置いている。スクールやドラキン交換日記で反論が多いのは「ハイグリップタイヤには安心感がある」というもの。それは利にかなった意見なのだが本末転倒な考え方でもある。ハイグリップタイヤでないと安心できない速度域でコーナリングしようとするからイケナイのである。グリップの少ないタイヤでも安心出来るスピードで走れば何も問題ない。自分の腕前を棚に上げて無理をしようとする根底にはラップタイムがあるのだ。誤解しないで欲しいのだが、モノに頼る事を否定しているのではない。この連載はドラテクの話だから、身に覚えのある方は気分を害さないでいただきたい。ドライバー本人の意識というよりもサーキットの環境によるものだから仕方がない。しかし読者のために断言しておく。本当にドラテクを磨きたいのならビギナーはハイグリップタイヤを履いてはいけない。リスクの少ない場所(安全なサーキット)を選び、安心できる環境(イベント)を探して段階を踏んでドライビングを身に付けてゆく事が絶対に正しい。ラップタイムはドラテクを身につけた成果であるのが本来の姿である。昨年からスタートしたドライバーズランキングはドライバーの客観評価にはベストなイベントだ。3大要素のうち「クルマ」「コンディション」をイコールに出来るのだから、速さの差は「ドライバー」だけなのである。だからドライバーズランキングと命名した。RaTech Web のメインコンテンツであるラップタイムランキングをチェックにやってくる読者の方々なら飛びついてくる事を期待して準備した企画だったのだが、思ったほどの反響はない。親しいドライバーにハッキリ聞いたところ「自分のドラテクは自慢出来るほどではないけど、それなりに自信はある。それが客観的に評価されてしまうと自分自身や自分の愛車を否定するような気がする」という。自らがマークしたラップタイムはドライバーとクルマの成果として大切にしておきたいのだろう。その大きな理由は、ドライバーの意識を変えてしまうサーキットという場所の環境にあるのだから仕方ない。せめてドラテク皆伝の読者には、ラップタイム主義よりもコーナリング主義を貫いてもらいたい。おそらく少数派であろうコーナリング主義者を数多く集めたくて、今年からドライバーズランキングに加えて新しいイベントを考案した。「借り物で走るドライバーズランキングはプレッシャーが強すぎる」というドライバーの方々に対応したものだ。それだけではない。サーキットの速さを決める3大要素をバランスよくまとめる事が出来る。1)クルマの絶対性能の差が出難くて安全な場所、2)適確なクラス分けを行なう、3)ラップタイムの優劣を正当に評価できるタイムアタックバトルだ。レースの公平性を借りてきたタイムアタック大会だが、決してレースではない。借り物が苦手な方はこちら、借り物でも大丈夫な方は同日開催されるドライバーズランキングにトライして欲しい。同じ空気を持ったドライバー達が必ず集まってくる筈だ。2002年をコーナリングについて考え直す年にしよう! |